IOTA-LOG

おとと、たびと、しごと

見つけてくださってありがとうございます!

スタジオイオタ代表の前田紗希です。

 

レコード会社の運営や自身のドラマーとしての活動を通して、

公私ともにお世話になっているZin “Atrevido” Hitoshi(小川仁)さん。

現在はメキシコを拠点に活動されていますが、先日一時帰国されたタイミングで、

ゆっくりお話を伺うことができました。

 

第1回は、マフィアとの対峙やESTAの罠といった、メキシコ生活の表と裏について伺いましたが、

第2回からはいよいよ音楽の核心へ✨

ドラマーなら一度は憧れるリズム大国、キューバ。

ドラム講師歴20年以上のZinさんが、なぜメキシコを拠点にキューバへ通い続けるのか——

そのルーツを深掘りしました。

単なる旅行記ではない、現地に飛び込んだからこそ見えてくる、

音楽と生活が密接に結びついた、濃密すぎる海外リアル体験談をお裾分けします。

ここからは、Zinさん自身の言葉でお届けします!

【実体験】音楽の前に生き延びろ。キューバ渡航ESTA問題とメキシコ生活で学んだ海外サバイバル

 

ニューヨークからブラジル、アフリカへ。世界を巡って辿り着いたラテン音楽

 

皆さん、こんにちは。Groove冒険家のZin “Atrevido” Hitoshiです!

前回はかなり物騒な話をしてしまいましたが(笑)、

ここからはなぜメキシコに住み、キューバに通い続けているのか——

音楽的なルーツについてお話しさせてください。

 

音楽家、特にリズムを探求する人間にとって、キューバは一生に一度は訪れたい聖地のような場所。

僕自身も、リズム・グルーヴの探究をする中でキューバへたどり着きました。

 

なぜキューバ音楽に惹かれたのか。現地の音楽家との人脈づくり

まずはアメリカ、そしてブラジルへ

日本でドラムを叩いていると、大体の人はまずアメリカの音楽を通りますよね。

僕も最初はニューヨークへ行ったりしていました。

でも、ある時「ブラジルのリズムは凄いぞ」と熱烈に勧めてくれた友人がいて。

実際に行ってみたら、もう圧倒されましたね🇧🇷

 

まさにリズム大国。アメリカの音楽とは全く異なる、強烈なエネルギーがありました。◆

そこからリズム探求はどんどん加速して。

 

当時、日本で師事していたガーナ人のパーカッショニストが帰国する際について行って、

ケニアの電気,ガス,水道のない村での住みこみ修行コンゴまで足を伸ばしました。

 

そうやって各地でリズムを掘り下げていく中で、ふと気づいたことがあったんです。

リズムだけが突出している音楽より、メロディやアンサンブルが高度に絡み合っている音楽が好きだ

 

アフリカの、太鼓一本で叩き出すプリミティブな表現も素晴らしい。

でも、歌があって、ホーンセクションが響いて、その中で複雑なリズムが緻密に機能しているラテンミュージックこそ、

僕が一番やりたいことなんだと確信しました。

 

そうなると、目指すべき場所はただひとつ!

ラテン音楽の最高峰、キューバでした。

 

3週間の滞在で確信。ここに住みたい

キューバを目指すことに決めたんですが、経路もちょっと面白いんですよ。

当時、日本でスペイン語を習っていた先生がグアテマラ人だった縁で、まずグアテマラに飛びました。

そこから、パナマを経由して、いよいよ本命のキューバへ

 

キューバには3週間ほど滞在しました。

目的は、後に師匠となるルイ・ロペス・ヌッサ(以下:ルイ)のドラムレッスンを受けること。

この3週間が、人生を完全に変えてしまいました。

現地の空気に触れ、ルイの音を目の当たりにして、ガツンときてしまった!

「ああ、これだ。俺が住む場所はここだ。キューバ最高!」

 

滞在中にそう確信するほどでした。

 

でも、そこからが現実的な問題の始まり。

 

キューバは外国人が住むにはビザのハードルが高い国

 

住みたい!と思っても、キューバは外国人が住むにはハードルが高い国。

現地のルールを調べていくと、選択肢は実質二つ——学校に入って学生ビザを取るか、キューバ人と結婚するか。

……いや、どっちも今の自分には現実的じゃないな、と(笑)

 

キューバという国は大好きだけど、住むための条件が厳しすぎる。でもこの音楽のそばにはいたい。

そこで考えたのが、メキシコに住んで、そこからキューバに通うプラン。

その後メキシコを回っていたら、今住んでいる街の宿の大家さんがすごく良い人で、「ここなら住めそうだな」と感じました。

キューバへのアクセスも良いし、ここを拠点にしようと決めたわけです。

 

現地に食い込む。ライブもリハも荷物持ちも

そうやってキューバに魅せられつつ、どう音楽の核へ食い込んでいくか

海外での音楽修行で、僕が一番痛感したのは人脈の大切さです。

 

初めてアメリカへ行った時、現地の知り合いが全くいなくて。

音楽をしに来たはずなのに、昼間にやることがなくて暇つぶしに美術館へ行く……なんていう、もどかしい経験をしました。

これじゃあ一日が勿体ない!

 

その教訓を活かして、キューバへ行く前には徹底的に準備をしました。

日本にいるキューバ帰りのドラマーから、現地で活躍するルイを紹介してもらい、渡航二日目にはレッスンを開始

 

とにかくグイグイ食い込む

でも、単にレッスンを受けるだけでは、現地の音楽の深いところまでは見えてきません

とにかくグイグイ食い込むことにしました。

「ライブはないのか?リハーサルを見学させてくれ。荷物持ちでもなんでもやるから」

 

普通の日本人なら遠慮してしまうような場面でも、なりふり構わず飛び込みました。

 

師匠のルイも最初は驚いていましたが、次第に面白がってくれて。

リハーサルに同行し、ライブにも無料で入れてもらえるような関係になっていました。

 

キューバのプロミュージシャンたちは、こうしたアグレッシブな姿勢を歓迎してくれる気質があります。

知人の中には、現地の音楽大学へアポなしで乗り込み、先生に直談判して空き時間にタダで教えてもらっていた猛者もいるくらいです(笑)

 

自分から扉を叩き、現場に飛び込む。

その一歩が、キューバという特別な場所で音楽の深さに触れるための、いちばん確かな入り口だと思っている。

 

リハーサル見学、なぜこんなにハイレベルなのか

そうして、運よくキューバのプロミュージシャンたちのリハーサルやレコーディングにも立ち会わせてもらえたんですが、

かなり勉強になりました。

 

みんなニコニコしていて、イエー!なんて言いながら演奏している。

でも耳はシビアで、誰かが「あそこ、こうしてみようか」と一言入れると、

ワン・ツー・スリー・フォーですぐ演奏が始まる。

日本だと、ずれたからもう一回やろうとなりそうな場面でも、

間違い探しじゃなくて、別のアイディアを試してみよう、と。

 

超ハイレベルなのに、ずっと楽しそうにやってるんです。

 

ストリートとアカデミーの違い

キューバには太鼓を叩ける人も、歌える人も国中にたくさんいます。

ストリートで演奏している人たちも、レベルは低くありません。

でもプロとの違いは音楽教育です。

 

  • 大学まで含めて、きちんと教育を受けているかどうか。
  • 譜面を見て、その場で高いレベルの演奏ができるかどうか。

そこが違うらしい。

 

ストリートの人たちは、昔から体に染み込んだリズムや曲は演奏できる。

でも、その場で決めた複雑なアレンジを全員で揃えて演奏するとなると難しい。

 

この国で音楽家として食べていくのは、こういうレベルを求められるんだなと思いました(笑)

 

ラテンアメリカは多様性に富んだ音楽の宝庫です。

国ごとに異なる宗教、人種に基づく音楽文化が存在し、その多様性こそが魅力の一因でしょう。

その中でも、キューバの音楽が最高峰と感じた理由は、

より複雑なポリリズムのアプローチとシンコペーションの嵐にありました。

 

医者より稼げるミュージシャン?キューバの不思議

衝撃を受けたことのひとつに、音楽家の社会的地位があります。

キューバは全職業の給料を国が管理している特殊な体制ですが、

少なくとも僕が見聞きした範囲では、ミュージシャンの収入は、医者よりも高い設定になっています。

 

理由は、ミュージシャンが「外国人から外貨を稼いでこれる」職業だから。

 

国がプロのミュージシャンを派遣して一晩働かせれば、国には多額の実入りがある。

国への貢献度が高いからこそ、給料も高く設定されているという、かなり合理的な仕組みです。

 

ハイパーインフレと配給制の中で、プロ音楽家として生きるということ

とはいえ、現地の生活自体は、僕たちの想像を絶するほどハード。

かつて平均月収が3,500円程度だった時代もありましたが、今はハイパーインフレの真っ只中。

月収が2倍になったとしても、物価はそれ以上に暴騰しています。

 

 

国からの配給(米や豆など)も、生きていくための最低限度。

一回配給所についていったことがありますが、その少なさに驚きました。

米と豆だけでどうやって暮らせというのか……。

 

 

そんな状況だから、現地のミュージシャンたちも生きるために必死です。

トップ奏者であっても、外国人に直接レッスンをするなど、個人のコネクションで外貨を稼がなければ生活が成り立たないリアルがあります。

それなのに、街を歩けば恰幅の良い人がたくさんいるから不思議なんですよね(笑)

 

物がなくて、インフレも凄まじい。

でも音楽は最高に熱くて、人々はタフに笑っている。

キューバという国が持つ底知れないパワーの源を、

僕は今も追い続けています。


 

EDITOR’S NOTE

前田紗希 / studio iota LLC.

NEXT☞次回は、リズムを歌うことの重要性について。ドラムの概念が変わるかもしれない、専門的なリズム論をお届けします。お楽しみに!

 

ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi

神奈川県横須賀市育ち。ドラマー,パーカショニスト。

2007年より海外への音楽修業の旅を敢行。
ブラックミュージックに傾向し、リズムのルーツを探るべく、アメリカ(ニューヨーク,ニューオリンズ)→ブラジル→ガーナ→ケニア→コンゴ→ジャマイカ→キューバへ渡航。
リズムの感じ方や考え方捉え方がまるで違う事を実体験。

横須賀市久里浜でRAGドラムスクールを主催。
YAMAHA Popular Music School講師として、14年の講師活動。ドラムプロショップGATEWAYにてキッズスクール講師として10年の指導活動。

2017年に行ったキューバにてカリビアンミュージックの洗礼を受け、2018年よりメキシコへの移住を決意。

国内の仕事をすべて投げ出し(笑)、ラテンミュージックの真髄を極めるべく、いざメキシコへ!

 

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