作曲家がアラブ音楽の『マカーム』を学んだら、微分音で音階の概念が崩壊した話
見つけてくださってありがとうございます✨️
スタジオイオタ代表の前田紗希です。
普段はドラムを叩いたり作曲をしたりしていますが、いま作曲をする上で猛烈に気になっている世界があります。
それは、バンド仲間でありカーヌーン奏者の鈴木未知子さんが主宰する
ポータルサイト「MEMOS-J」が発信している
中東音楽の世界!
そして!先日開催されたアラブ音楽のマカーム講座のオープンキャンパスに参加してきました。
講師はニューヨークからリモート参加の、
Sami(サミ・アブ・シュメイズ)先生。
本格的なレクチャーをガッツリ受講してみた結果…
これまでの音楽の常識、日本的な文化の価値観が揺さぶられました。
アラブの琴 「カーヌーン」
いずれも西洋の楽器より古い歴史を持つものが多い
◆
中東音楽については、まだまだひよっこな私。
無知を突きつけられながらも、ドタバタと学び始めた体験記をお届けします。
温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
📚 図書館に走っておいて本当に良かった
講座を受けるにあたって、少し前に図書館へ行って『アラブの音文化』という本を借りていました。
マカーム、ジンスといった基本的な用語の頁を
図書館でコピーし、予習。
さらに、西洋音楽の全音・半音にはない
四分音(クォータートーン)なる概念も確認。
リズム体系も、西洋音楽にはあまり見られない、7拍子、9拍子、10拍子、13拍子などが存在する
……これが本当に良かった!!!
予習がなかったら、開始5分で完全に詰んでた自信があります。
普段、西洋音楽の作曲やDTM(パソコンでの作曲)をしている私にとって、アラブ音楽はけっこう未知の世界。
でも、楽譜制作ソフトを覗くと、
実はクォーターフラットの記号があったりするんですよね。
Musescore 最近はプラグインも使えるようになったよね
西洋音楽の標準的な半音よりも狭い音程が、
あのアラブ音楽特有の艶やかさを生み出す鍵なのかも知れませんね。
君、ここで使う調号だったのか!なんて小さな発見に喜んでいるレベルですが、
一歩ずつ、攻略していこうと思います。
🧠 「期待」と「サプライズ」の絶妙なバランス
今回の講座でとくに面白い!と思ったのが、
なぜ私たちは音楽を美しいと感じるのか?
というアプローチです。
Sami先生いわく、そこには脳の「期待」と「サプライズ」のバランスが関係しているそう。
お気に入りの曲を何度も聴くのは、
次にくる展開を「期待」して、それが心地よく満たされるから。
でも、その期待が100%通りだと退屈してしまう。
そこに数パーセントの「サプライズ(裏切り)」があるからこそ、私たちはその音楽に惹かれるのだそうです。
ProToolsとGarageBandの違いも触ってみるとびっくりよ
ここで登場するのが、行動心理学の
断続的強化(インターミッテント・リインフォースメント)
の概念。
これは、期待した報酬(結果)が、毎回ではなく『たまに』与えられることで、かえって欲求が強まる心理現象です。
たとえば、現在流行しているポップミュージック。
- 基本は「聴き慣れた、期待通りの展開」で安心させる。
- でも、そこに数パーセントだけ「新しい響きや予想外の展開」というサプライズを絶妙なタイミングで混ぜる。
- すると脳が「次は何が来る!?」と興奮し、大きな快感を覚える!
この「期待と裏切り」のバランスこそが、マカームの魅力の正体なのだそうです。
ただし、「何がスタンダード(期待)とされるか」は文化圏によって違う、ということを忘れてはなりません!
うちのバンド、ダラブッカ叩ける奏者がいるんです。しかも教則本まで出してる!
🎼 マカームとは、特定の音楽文化圏において実践される、複数のジンス間で共有された道筋(ネットワーク)である
ここからは、講義の核心であるマカームついて。
アラブ音楽には、旋律を形づくる独特の音楽理論・概念である『マカーム』があり、
種類も驚くほど多い。(ポケモンかな)
多くの人はマカームを「音階(スケール)」と同じものだと考えがちですが、
Sami先生は「その考えはむしろ後退している!」とバッサリ。
マカームは単なる音の並びではなく、もっと広い意味を持つそうです。
マカームを理解する鍵は、旋律の最小単位、「ジンス(Jins)」にあります。
複数のジンスを組み合わせることで、ひとつのマカーム(音階や雰囲気)が形成されます。
(AパーツとBパーツが合体して巨大ロボが完成するイメージ!)
ジンスは3・4・5音の構成(トリコルド/テトラコルド/ペンタコルド)から構成されます。:
参考文献を読みながら、自分でもまとめてみました
ジンスは単なる3・4・5音のまとまり単位ではなく、次の3つの要素が常に相互作用しています。
- フィーリング(感覚)
- メロディー(旋律の動き)
- インターバル(音程の幅):「ナハワンド」ならキュッと狭い音程、「ヒジャーズ」ならグワッと広い音程の幅が含まれています。この物理的な距離感が個性を生みます。
「固定ド」を捨てて、相対的な「1」を捉える
実習曲『ヤ・シャディ・アル・アルハン(Ya Shadi Al Alhan)』の分析では、なかなか衝撃の教えが。
アラブ音楽は、絶対的な高さ(固定ド)よりも、音と音の「相対的な関係」を重視します。
先生は主音(トニック)をC(ド)などの音名ではなく、位置を示す「1」という数字で呼びました。
西洋音楽だと「キーはC」と固定しがちですが、
マカームでは「中心軸(1)から見て、今どの位置にいるか」という視点が超重要。
この軸を記憶に焼き付けることが、マカームの宇宙を解読する基準点になるんです。
旋法(モード)は音の相対関係を示すもので、根音(基音・終止音)の高さには関係がない――
西洋音楽の教会旋法でみたシステムですね。
2. 固定された「ハシゴ」ではなく「地図」を進む
マカームの変化は、固定されたハシゴを登るようなものではありません。
- 7番目の音が下がれば「ジンス・ナハワンド」の道へ。
- 6番目の音が変われば「ジンス・ヒジャーズ」の道へ。
まるで地図を見ながら「次はあっちの道(ジンス)へ寄り道してみようかな」とルートを選ぶような感覚です。
ここには「セーヤ(Sayr)」と呼ばれる旋律の習慣的な動き(道筋)がありますが、
多くの場合ガチガチの順番が決まっているわけではありません。
さらに「インターポレーション(挿入)」といって、
目的地に行く途中でわざと別のジンズを寄り道して挟む技法もあり、
期待をあえて一度はぐらかし、寄り道をすることで、楽曲にドラマチックな複雑さとバラエティーが生まれるそう。
なんてTVドラマ的な構造なんだろう!と、オタクの想像力も刺激されまくりでした。
(私はこの辺りで知識がこんがらがってパンクしかけました!笑)
ヘルシンキの図書館では楽器が無料でレンタルできます
◆
Q&Aセッションもすごく実践的で、目からウロコの戦略がマジでたくさん聞けました。
詳しく知りたい方はぜひ講座を受講してみては如何でしょうか!
🏃♀️ おわりに
第一回のオープンキャンパスを終えて、いまの正直な感想は……。
わぁ、これも知らない!あれも聞いたことない!のオンパレード🌋
おのれの無知をこれでもかと突きつけられ、慌てて書き記しています。
マカームは、頭で理解する理論というより、耳に「感覚」を蓄積していくもの。
イントネーションや細かな音程は、
地域や時代(20世紀エジプトの中でも!)で変化し続ける、
生き物のような音楽だそうです。
◆
次回狙っている、5月17日のワークショップは「マカーム・バヤーティ」がテーマだそうです。
バヤーティはアラブ音楽で非常に人気のあるマカームとのこと。これは申し込むしかない……!
作曲家のひよっこマカーム探求、まだドタバタと続きます
皆さんも、一緒に中東音楽の深い沼をのぞいてみませんか?
それでは、また次回の探求記でお会いしましょう!🥁✨️
MEMOS-J 公式リンク集はこちら
https://linktr.ee/memos.japan
前田紗希(スタジオイオタ)
https://studio-iota.com/
作曲家、ドラマー、鍵盤奏者、RECエンジニア、音楽心理士。
国立音楽大学在学中にデビューし、その後、ロンドン、ベルリン、ニューヨークでの演奏経験を重ねる。25リットルのリュックとドラムスティックを携えて世界一周のち、旅・音楽・食を融合させるレコード会社「studio iota LLC.」を設立。
国内外で音楽家として演奏活動を行うのみならず、音楽療法士としても活動し、心理学の学位を取得。
オウンドメディア4誌の編集長で「車中泊」コンテンツなど数々のSEO1位を生み出す。
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