IOTA-LOG

おとと、たびと、しごと

自由が丘、尾山台、等々力…

このへんって聞くと、おしゃれなカフェとか雑貨屋さんとか、そういうイメージですよね。

実はこのエリア、濃厚な「水の歴史」が刻まれた場所なんです。

 

今回は大井町線の、等々力・尾山台・九品仏、自由が丘、そして緑ヶ丘まで。

おしゃれな街の下に隠された、かつての川の痕跡『暗渠』を探す旅に出てきました。

これがまた、すごく面白かった!

ってな訳で、東京生まれ・東京育ち。東京街歩き人のオキツカズヒロがまったり暗渠レポートしていきます!

九品仏池があった公園「ねこじゃらし公園」

 

そもそも暗渠(あんきょ)って何?

いやいや、さっきから言ってる『暗渠』って何よ?って人もいると思うので、まずはここから。

暗渠(あんきょ)とは、蓋をされて地下に隠された川や水路のこと。

かつて東京には、大小さまざまな川や水路が、網の目のように張り巡らされていました。

でも都市化が進むにつれて、川は邪魔な存在になっていきます。

道路にした方が便利。土地として使いやすい。

ってことで、多くの川に蓋がされて暗渠になっちゃったんですね。

 

今では川だったことすら忘れられてる場所も多い

でも、よーく見ると、道の形や地形に、かつての川の痕跡が残ってるんです!

これを探すのが暗渠散歩の醍醐味。

 

地図見ても、Google マップ見ても、そこに川があったなんて分からない。

でも実際に歩いてみると絶対川だったでしょ!って場所が現れる。

この発見がたまらなく楽しいんです。

木道風の遊歩道。川跡がこの造りになっているのは珍しい

 

準備編

さて、暗渠散歩に出かける前に、僕がやってる準備を紹介します。

・・・

その街の歴史をチェック

文献を読むとか小難しい事じゃなくても、Wikipedia で調べる程度でOK

へー、このエリアって昔は田んぼだらけだったんだとか、その程度で十分。

今回は大井町線沿いをリサーチしたら、呑川(のみかわ)とか九品仏川(くほんぶつがわ)って名前が出てきて、

これが暗渠になってるのか!と当たりがつきました。

(※ちなみに僕はマニアなので文献を読むのも好きですw)

・・・

地図で位置関係を把握

Google マップで大まかな位置関係を確認。

拡大したり引きで見たりできるのは便利。

航空写真モードで、街中に不自然に緑が続いている場所があれば、

それは「緑道」=「暗渠」の可能性大!これがヒントになることも。

自由が丘と九品仏のまん中あたり、九品仏川緑道

・・・

周辺のお店をチェック

パン屋さん、カフェ、スイーツのお店をチェック。←これ重要w

散歩の合間に立ち寄れるお店があると、テンション上がるじゃないですか!

今回のエリアのカフェ情報、そちらは別記事で詳しく紹介してます。

九品仏川緑道沿いにある「CHILT CAFESTAND & CRAFT」。暗渠でカフェという組み合わせも刺さります

・・・

当日の持ち物

・グミやチョコはマスト!

口さみしいのは、やっぱりさみしいw

暗渠探しに夢中になってると、気づいたらお昼過ぎてたりするので、小腹を満たせるものは必須です。

 

・お風呂セット(あるとよい)

最近、銭湯にハマってまして。

散歩終わりについでに近くの銭湯へGO♨️

疲れを癒してくれる最強の楽しみ方!おすすめ。

最近は露天風呂だったり、温泉だったり、漫画読み放題だったり、550円で楽しめるのが最高すぎる。

 

こんな感じで、力いれずまったりやってます!


 

当日編:暗渠サイン発見!

さあ、いよいよ当日!

暗渠を探すときの僕の方法は、こんな感じに。

  1. とにかく細い道を探してまわる。
  2. 車侵入禁止の柵を発見
  3. 地図で確認
  4. 暗渠確定👍

みたいな流れ。

工大橋(こうだいばし)中央からの景色

 

今回特に注目したのが、道のサイドに生えてる苔(こけ)です。

暗渠サイン=苔!

これ重要。

 

暗渠って、地下に水が流れてるから、地表の湿度が高いんです。普通の道だと、こんなに苔は生えないでしょう。

緑がかった壁、湿った空気感、ちょっと薄暗い道…

苔むしてる!って気づいたら、そこはもうかつての川の上。

歴史の匂いを感じながら歩を進めます。

等々力駅周辺、水系のレイヤーを辿ると見えてくるもうひとつの地形「逆川」

 

等々力・尾山台・九品仏・自由が丘エリア

大井町線って、実は川の流れと密接に関係しているんです。

この沿線には、東京湾に注ぐ呑川(のみかわ)の支流がいくつも存在していました。

そのひとつが九品仏川(くほんぶつがわ)。

現在はほぼ暗渠化され、九品仏川緑道として整備されています。

浄真寺付近

 

たとえば自由が丘でよく見かける、あの緑道。

実は、川だった場所なんです。

このように、かつての川筋が地形として残ってることが少なくありません。

マニアには有名なスターバックス コーヒー 奥沢2丁目店の近く。
緑道はちょうど区境になっていて、写真奥のベンチは世田谷区、手前のベンチは目黒区に位置している

 

地形に注目するならば、尾山台小学校の南側から浄真寺にかけての低地に、かつての川の痕跡が見えてきます。

周辺の湧水や雨水がこの低地に流れ込むから、川は完全に消滅することなく、

現在も大井町線の線路脇には、水路の名残が残っています。

大井町線沿いに残る、線路脇の暗渠へ

・・・

■ 衝撃!駅の中に川が流れていた!?

さらに驚いたのが尾山台駅

数年前まで、尾山台駅の構内を暗渠が貫通していたんですって。

尾山台駅前、「さぼてん」の横にある小道。この先に、ちょっとした“答え”が待っています

 

すでに撤去されてしまいましたが、かつては駅の下に結構な幅と深さの川が流れていたなんて…想像するとワクワクしません?

現代の地図では見えない水のネットワークがあったんですね。

線路の両サイドは区立の自転車等駐輪場になっている

・・・

■ 「不自然な真っ直ぐ」の謎

尾山台〜九品仏の間で、思わず「おっ?」と声を上げた場所がありました。

暗渠が南北に真っ直ぐなんです。

 

普通、自然の川(暗渠)は蛇行してクネクネしているもの。

 

なのに、ここは蛇行もなく真っ直ぐ!

これはつまり、「人の手で作られた人工的な川」だったということではないかとワクワク。

 

そこまで古い歴史があるわけじゃない。人の手が入った新しい川なのに、

都市化の波で邪魔物扱いされて蓋をされてしまった。

川にとっては悲しい過去かもしれません。

 

でも、ふと思ったんです。

暗渠になったおかげで、街が分断されずに面としての発展ができたんだと。

蓋をすることで、その上を人が歩き、生活が繋がった。

そう考えると、暗渠もまた都市の立派な功労者なんですよね。

 

自由が丘エリア、暗渠が作ったおしゃれタウン

自由が丘の定番スポット、あのベンチが並ぶ「緑道」。

あれこそがまさに、九品仏川の暗渠です。

自由が丘の定番スポットとして、書籍やウェブでもよく登場する緑道

 

ここを歩いていて推測しました。

自由が丘は、暗渠だからこそ発展したのではないか、と。

もしここが開いたままの川だったら?

左右のお店を行き来するのも大変だし、ベンチに座ってスイーツを食べるあの空間も生まれなかったはず。

川に蓋をしたことで「買い場」としての回遊性が生まれ、人が集う場所になった。

 

■ 未来の東京は、再び「水」を求める?

ここで少し、未来の話をさせてください。

今、日本橋の上空を覆っている首都高を地下化して「日本橋の空を取り戻す」プロジェクトが進んでいます。

高度経済成長期には「効率」が優先されて蓋をされた川や、首都高の建設によって薄暗い雰囲気の空が、

令和の今、「憩い」や「安らぎ」を求めて再び姿を現そうとしている

 

これ、暗渠にも同じことが言えるんじゃないかな。

 

今は蓋をされている九品仏川も、10年後、20年後には蓋が外されて、水面が顔を出しているかもしれない。

「効率」の時代から、「安らぎ」の時代へ。

私たちが都市に求めるものが変われば、街の姿も変わっていく。

 

そう遠くない未来、自由が丘で小川のせせらぎを聞きながらラズベリーパイを食べる日が来るかも…

なんて想像すると、なんだかロマンを感じませんか。

 

緑ヶ丘エリア

緑ヶ丘エリアまで来ると、ついに暗渠の蓋が外され「開渠(かいきょ)」となります。

川が再び日の目を浴びる瞬間です。

そのせいか、この辺りはもうジメッとした雰囲気がなくて、すごく明るい!

言語化できないけど、街全体に開放感があるんです。

 

暗渠のミステリアスな雰囲気も好きだけど、やっぱり水面が見える風景もいいもんです。

水と共に生きる東京の姿を、目で感じることができました。

緑が丘駅、呑川本流緑道。都立大学、目黒区八雲を経由して世田谷区新町へ約3kmつづくルート

 

 

まとめ。東京はやっぱり「水の街」だ

今回の暗渠散歩で改めて気づいたこと。

それは、東京の街って「水の上」に成り立っているということ。

普段僕たちが何気なく歩いているアスファルトの下には、かつて川が流れていた。

そしてその水は、今も地下で静かに流れ続けている。

 

地図を見ただけじゃ分からない。

でも実際に歩いてみると、地形の起伏、道の曲がり方、苔の生え方、

いろんなサインがここに川があったんだよって教えてくれます。

都市は、こうやって何層にも歴史が重なってできているのでしょう。

 

これから東京という街がどう変化していくか、人々が何を求めていくか、本当のところは誰にも分かりません。

また川に戻るかもしれないし、全く違う姿になるかもしれない。

ただ一つ確かなのは、「暗渠にいても、確かに水を感じることができた」ということ。

 

暗渠もいいし、開渠もいい。

蓋がされていようと、空が映っていようと、その本質は変わらない。

東京は、昔も今も、そしてこれからも、やっぱり「水の街」なんです。

そう強く思い知らされた、暗渠の旅でした。


オキツカズヒロ
東京生まれ、東京育ち。旅ブロガー。
東京の都市開発の歴史(特に水辺)が好きで姉妹サイトにて「東京街歩き」を連載中。スイーツ男子。

アルバム、都市の旋律

流れるイオタ(前田紗希×矢野聖始/コラム : オキツカズヒロ)が、2024年10月23日に5作目のフルアルバム『都市の旋律』をリリースした。

全11曲で、各駅の街の表情や空気を音に落とし込んだ、ミュージック・ツーリズム作品だ。

ただのBGMではなく、音楽が、旅のガイドブックみたいな存在になったらいい。そんなアルバムを目指している。

 

⇩アルバム『都市の旋律』 トラックリスト⇩
01 浜松町、動き出す街の鼓動
02 天王洲アイルの静寂
03 大井競馬場デイライト
04 流通センターを抜けて
05 昭和島ノスタルジー
06 整備場パッシングバイ (feat. Rica)
07 天空橋アクロス
08 第3ターミナル、ニューヨークへ
09 新整備場ライト&ダーク
10 第1ターミナルの雨音 (feat. 松崎 和訓)
11 羽田空港第2ターミナル – 旅の終わりと始まり (feat. 小畑 仁)

 

Spotifyなどでぜひチェックしてほしい。

▶︎配信リンク: https://lnk.to/9tAPyv1m

Spotify(クリックすると音楽が流れます)


🌆東京モノレールの車窓から見えるのは、都市の表情そのもの。

「動き出す街の鼓動」を聴きながら、音楽と旅の新しい関係が始まる。

▶️過去記事(浜松町アイル駅)

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