【音楽産業と知的財産】音楽を「作る」から、「残る形で考える」ようになった一年
こんにちは、スタジオイオタ代表の前田紗希です。
2025年は、私にとって音楽を作ることそのものよりも、
その音楽をどう残し、どう活かしていくか
を考える時間がとても増えた一年でした。
これまでは、
旅をしながら、感じたことを音にして、
歌のない音楽として形にしていくことに夢中でした。
それは今も変わらないのですが、
同時に、
この音楽はどんな名前で、
どんな形で、
どんなふうに未来に残っていくのだろう
そんなことを、少しずつ考えるようになりました。

これは「いち音楽家」として考えていること
ここから書くことは、
法律の専門家としてのガイドではありません。
私は、現役音楽家であり、
たまたまレコード会社と音楽出版社を運営している、
ひとりの現場の人間です。
日々の制作や仕事の中で
これは大事かもしれないな、と感じたことを、
あくまで自分なりの視点で整理してみます。
専門的な正確性よりも、音楽家としての実感を優先して書いています。
もし法的な判断が必要な場面では、必ず専門家に相談してくださいね。

音楽の知的財産って、そんなに難しいもの?
知的財産と聞くと、
なんだか急に難しく感じてしまいますよね。
でも、私自身は、
音楽に関わる知的財産を
とてもシンプルに考えています。
大きく分けると、いくつかの層があるように感じています。
名前も、音楽の一部だと思う(商標)
旅をしていると、
看板ひとつで、あのお店だと分かって、
少しホッとすることがありますよね。
音楽も、どこか似ている気がしています。

2025年、私は自分のレーベルや、
関わっているプロジェクトの名前を、
改めて大切に育てることを意識しました。
この名前の音楽なら、
安心して聴ける。
きっと、あの感じだろう。
そんなふうに思ってもらえる信頼を、
少しずつ積み重ねていくこと。

専門的には、
商標と呼ばれる制度があり、
名前やロゴを登録して守る仕組みがあります。
私にとっては、
旅の途中で出会った大切な場所に、
そっと目印を置いておくような感覚に近いです。
ここに、こんな音楽がありますよ、と伝えるために。
迷わず、安心して立ち寄ってもらえるように。
自分たちが積み上げてきた音楽や活動が、
ちゃんと伝わる形になるよう、
その目印を整えようとしてきた一年でした。
私自身も少しずつ勉強しながら、
自分たちの活動に合った形を模索しているところです。

音楽そのものに関わる権利のこと(著作権)
音楽の話になると、
やはり避けて通れないのが、著作権のことです。
たとえば、
楽曲の核となるメロディや歌詞。
それらは、作り手の著作物として、
著作権で守られています。
誰が作ったのか。
どう使われるのか。
制作の途中で、立ち止まって考える場面がこれまで以上に増えました。

店舗でBGMを流す場合も著作権者の許諾(許可)が必要だったり
作って終わりではなく、
この音楽は、
これからどんな場所で、
どんなふうに鳴っていくのか。
そんな視点を強く持つようになったのも、
2025年の変化だったと思います。
一方で、それを録音した音源については、
また別の権利の話になってきます。
メロディや歌詞を作った人の権利と、
その音を録音して形にした事業者の権利は、
別々に存在しているんですね。

クライアントワークでは、著作権の帰属や権利関係をしっかりクリアにしています
演奏する人、世に送り出す事業者にも、ちゃんと権利がある(著作隣接権)
もうひとつ、
個人的にとても大切だと感じているのが、
著作隣接権という仕組みです。
日本の著作権法では、
音楽を作った人だけでなく、
それを演奏したり、
録音を実現するためにスタジオを整え、
費用と労力をかけて音を形にした
レコード製作者にも、
別の権利が認められています。

演奏家権利処理合同機構(MPN)
楽器の演奏家や歌手などの実演家。
音を形にするレコード製作者。
そして、その音を公共の電波に乗せて届ける放送事業者。
音楽は、作る人だけでなく、形にする人、届ける人がいて、
はじめて多くの人の元に届きます。
私のように小さな会社を運営している場合、
自分が作曲をして、演奏をして、
レコードの製作者にもなることがあります。

それぞれの役割に、それぞれ守られるべき立場があるんだと知ったとき、
とても安心したのを覚えています。
自分たちが守られているのと同時に、
関わってくれる全ての役割に敬意を払うこと。
それは、2025年に改めて強く意識しはじめたことのひとつです。
ポッドキャストも始めました!
#2 結婚式の音楽選びにまつわる音楽著作権
仕組みや経験も、音楽を支えている
そして最後に。
これは法律の話ではありませんが、
とても大切だと思っていることがあります。
それは、
制作の流れや、仕事の進め方、
失敗や試行錯誤の記録も、
音楽を支える大事な要素だということです。

旅先でのドタバタや、
思い通りにいかなかった制作の日々も含めて、
そうした経験が、次の音楽を作る土台になっていく。
2025年は、
そうした経験を[おとと、たびと、しごと]というコンテンツ(このブログ!)として、
少しずつ言葉にして、外に出していくことも意識してきました。
2025年を振り返って
振り返ると、2025年は、
音楽を「作る」ことから、
音楽とどう付き合い続けるかを考える一年だったように思います。
あくまで、
いち音楽家としての実感ですが、
音楽を長く続けていくためには、
音そのものやミュージシャン仲間だけでなく、
その周りにあるものにも目を向けることが、
案外大切なのかもしれません。
同じように悩んだり、
考えたりしている人がいたら、
この文章が、ほんの少しでも参考になればうれしいです。
今年も楽しい時間を、ありがとうございました!
良いお年をお迎えください✈️
参考文献 :
高木啓成(2020) . 『弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール』 . 日本加除出版 .
安藤 和宏(2021) . 『よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 6th Edition』 . リットーミュージック .
参考URL :
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