【昭和島駅】東京のエアポケット。夜間人口ゼロの島に眠る、異世界
流通センターの機能的な風景を抜け、モノレールはさらに奥へと進む。
やがて到着するのは、まるで都市の地図からこぼれ落ちたかのような場所、「昭和島」駅だ。
ここは、東京に隠されたエアポケット。夜間には人口がゼロになるという、
極めて異質な時間と空気が流れる島である。
東京モノレールの車両基地とリムジンバスの車庫
昭和島駅のホームに降り立つと、
まず目に飛び込んでくるのは、
東京モノレールの車両基地だ。
日中、我々を乗せて都市を駆け巡った車両たちが、
ここでは静かに体を休めている。
時にはメンテナンスの様子を間近で見られるのは、この駅ならではの特権だろう。
リムジンバスの車庫も近くにあり、
昼夜問わず、乗り物たちがひっそりと休む風景が広がっている。
まるで、動き続ける都市の裏側にある「帰る場所」のようだ。
人口ゼロの島
運河に囲まれた島には、
会社や公園が点在しているが、
暮らしの気配はほとんどない。
それもそのはず、日が落ちれば、この島は無人の地となる。
都心からわずかな距離にありながら、その静けさは肌で感じられるほど深く、
まるで時空の歪みに迷い込んだかのような錯覚に陥る。
ノスタルジックな駅舎
駅舎やその周辺に漂う、どこか懐かしい空気感。
「昭和」という駅名も相まって、自分が今どの時代にいるのかさえ曖昧になる。
改札階に向かうまでの動線は、都内の駅では見慣れないほど複雑だ。
ひとつ階段を上がると、すぐに改札があるわけではない。
踊り場を折れ、もう一段上り、さらにくの字に曲がった通路をしばらく歩いて、ようやく改札へとたどり着く。
駅を出てすぐの跨線橋もまた、行き先を惑わせる。
何本もの階段と歩道橋が入り組み、地上と高架が複雑に交差する。
道を間違えたかと思って引き返すと、さっきと同じ場所に戻っていた——
そんな感覚に何度か襲われる。
何もしない、をする場所
人の気配が消えたあとの空気はどこか澄んでいて、
風の音や水面の反射までくっきりと感じられる。
この静けさの中を歩いていると、都市の喧騒の中では忘れてしまうような、
時間の流れや呼吸を取り戻せる気がする。
少しだけ寂しくて、でも心地よい。
そんな感情を呼び起こすこの場所は、
今では珍しくなった「何もない」の魅力を、静かに伝えてくれているのかもしれない。
都会の喧騒から離れて
生産性から解放され、ぼんやりと空を眺めたり、風の音に耳をすませたりする。
そこでふと立ち止まることで、自分自身の輪郭が、すこしだけはっきり見えてくる。
車両も、人間も、動き続けるためには、立ち止まる場所が必要だ。
車両たちも、私たちも、やっぱりここは「帰る場所」なのだ。
アルバム、都市の旋律
東京モノレール各駅の風景を音にした、私たち“流れるイオタ”(前田紗希×矢野聖始)のフルアルバム『都市の旋律』。
その中でも「昭和島ノスタルジー」は、時間が止まったような静けさと、少しだけ懐かしい気配を音で描いた楽曲だ。
レールの響き、風の音、そして心の奥に残るノイズ。日常からほんの少し離れたくなったとき、
この曲がそっと背中を押してくれるかもしれない。
⇩アルバム『都市の旋律』 トラックリスト⇩
01 浜松町、動き出す街の鼓動
02 天王洲アイルの静寂
03 大井競馬場デイライト
04 流通センターを抜けて
05 昭和島ノスタルジー
06 整備場パッシングバイ (feat. Rica)
07 天空橋アクロス
08 第3ターミナル、ニューヨークへ
09 新整備場ライト&ダーク
10 第1ターミナルの雨音 (feat. 松崎 和訓)
11 羽田空港第2ターミナル – 旅の終わりと始まり (feat. 小畑 仁)
Spotifyなどでぜひチェックしてほしい。
▶︎配信リンク: https://lnk.to/9tAPyv1m
Spotify(クリックすると音楽が流れます)
情報過多の日常に疲れたとき、
「昭和島ノスタルジー」が
小さな”秘密基地”への入り口となってくれたら。
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