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おとと、たびと、しごと

2016年に公開された、新海誠監督による長編アニメーション映画「君の名は。」。

少年と少女の入れ替わりから始まる不思議で壮大なストーリーは、

映像美個性豊かなキャラクター達の力もあいまって、何度味わっても薄れることのない魅力に満ちています。

なかでも、ロックバンド・RADWINPSが担当した音楽は、「もはや台詞やモノローグとしても機能しているのでは」と思わせるほど、作品と切っても切り離せない存在感を放っています。

そこで今回、RADWINPSの音楽にじっくり耳を傾けつつ、主人公のひとりである立花瀧(たちばなたき)の暮らす東京へと、聖地巡礼の旅に出てみました。

 

※以下、ネタバレを含みます。

「憧れの街、東京」がぎゅっと凝縮された風景と音楽

 

まずは、JR新宿駅の南口を出て、新宿サザンテラスへと続く歩道橋へ。

歩道橋の上から見ることができるのが、

瀧と入れ替わってしまった宮水三葉(みやみずみつは)

初めて高校へ登校するシーンの風景です。

(私が訪れた際は運悪く工事中で立ち入りができなかったため、少し右横にずれた位置で撮影しました)

 

駅に沿って立ち並ぶビルや商業施設、賑やかに行き交う人々。

何度訪れても眩しさを感じてしまう眺めで、まさに「東京やぁ……!」と言いたくなります。

気持ち分かるよ、三葉。

 

このシーンで流れる「はじめての、東京」では、はじめは少し遠くから聞こえてくるように優しく鳴っていたピアノやストリングスが、次第に大きさと力強さを増していきます。

糸守での閉鎖的な暮らしに不満を抱えていた三葉が、瀧としての生活に戸惑いながらも、

憧れだった〝都会〟の街並みに胸を高鳴らせている様子が伝わってくるようです。

 

一瞬で物語の世界に引きずり込まれるロックサウンド

続いて訪れたのが、新宿警察署裏の交差点

 

瀧と三葉が入れ替りの事実に気付き、主題歌「前前前世」が流れ出すシーンで、特に印象的な描かれ方をしているスポットです。

疾走感溢れるイントロに合わせ、ビルの明かりが夜空を煌々と照らす時間帯から、太陽が昇ってくるまでの様子を描いたタイムラプスの美しさは必見。

夢灯籠」に続く第2のオープニングとも呼べるこの場面では、西武新宿駅pepe前広場から見る街並みも描かれています。

 

異なる世界で、それぞれの人生を生きていたはずの瀧と三葉

RADWINPSが紡ぐ音楽や言葉に耳を傾けながら街を歩くと、交わるはずのなかったふたりの時間が交差し、大きく動き出していく物語に足を踏み入れたような感覚がありました。

エネルギーに満ちた街の音に紛れて、どこかから瀧や三葉の声が聞こえてくるのではないか?と錯覚しそうになります。

 

甘酸っぱさと切なさが胸を締めるメロディ

入れ替わり中に三葉がした約束によって、憧れと、おそらく好意も寄せていた奥寺先輩とデートをすることになった瀧。

慌てて自宅を飛び出し、息を切らしながら待ち合わせの四ツ谷駅へ到着します。

 

観ているこちら側まで何だかそわそわしてしまう、甘酸っぱい一幕に欠かせない楽曲が「デート」。

ピアノの音だけで静かに、優しく始まるメロディに対し、ストリングスの音色がそっと寄り添います。

途中、三葉の予想通り瀧と奥寺先輩の会話がなかなか弾まないシーンでは、メロディに変化が生まれ、どこか楽しげな雰囲気に。

 

三葉が作成した「奥手な君を助けるための厳選リンク集」の絶妙なチョイスを思い出し、思わずふっと笑ってしまいそうになります。

きっと三葉は楽しんでいたでしょう、あれ作るの。

 

瀧曰く、散々だったデートが終わり、三葉に電話をかけようとする場面では、JR信濃町駅前の歩道橋が登場します。

 

ここでも冒頭と同じピアノのメロディが繰り返されますが、

物語のなかで夕暮れ、夜と時間が流れるにつれてオクターブが下がり、音の厚みが増してゆきます。

日が暮れるにつれて風も秋らしくなったせいか、哀愁漂うメロディがいっそう胸を締めました。

 

ふたりの再会と未来に想いを馳せる

最後に、「君の名は。」のラストシーンに登場する東京四谷総鎮守・須賀神社へやってきました。

 

神社への道中に聴きたい楽曲といえば、「なんでもないや」。

心臓の音を思わせるタムの音色に、ギターやシンセサイザーが柔らかく絡まるmovie editバージョンのイントロも印象的です。

 

映画本編では、ふたりの乗る電車がすれ違い、視線がはっきりと合った直後に曲がサビを迎えます

抑えていた感情を溢れさせるかのごとく力強くなるvo.野田洋次郎さんの歌声は、目的地へと向かうこちらの歩調まで、何かに急き立てられるかのように速めさせる力がありました。

 

彗星の落下から時が経ち、入れ替わっていた頃の記憶が少しずつ薄れながらも、ずっと「誰かを探している」感覚だけは抱き続けていた瀧と三葉。

ふたりの物語に想いを馳せつつ、音楽と共に巡った旅の景色は、とても鮮烈に胸へ刻まれました。

 

「音楽」を旅の主役にしたら、より深く物語の世界へ没入できた

彗星の落下を巡って、まったく異なる人生を生きていた瀧と三葉が出会う過程や、彼らを取り巻く人々の物語を描いた「君の名は。」。

私自身、何度も劇場や円盤で観た思い入れの深い作品です。

今回、RADWINPSの音楽を聴きながら街を歩くことで、物語の世界を実際に歩いているような没入感を味わえました。

もし、これから聖地巡礼をしようと考えている方がいましたら、ぜひ音楽を旅の主役にしてみてはいかがでしょうか。

 


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ライター : Nishiki

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