音が波になって、心が躍る。プロミュージシャン×整体師・小沢栄介のユニークなキャリアと音楽療法への挑戦
「その人にしかできないこと」が、人の心を動かす
こんにちは。スタジオイオタ代表の前田です。
studio iota LLC.とご縁のある仲間たちを紹介するインタビューマガジン。
どんな背景を持ち、どんな想いでイオタと関わり、どんなチャレンジに取り組んでいるのか――
それぞれの歩みを通して、イオタとつながる人たちの魅力を、じっくりとお伝えしていきます。
第2回は、「かるがも整体院」の院長であり、当社の音楽療法プロジェクトの中心人物でもある、
小沢栄介さんへのインタビューです。
プロのミュージシャンとしてステージに立ち、現在は整体師として多くの人の身体を癒す。
そして今、その両方の経験を融合させ、「音楽療法」という新たな分野に挑戦しています。
今回のインタビューでは、「整体」と「音楽」。
まったく異なるように見える2つの道を、どのように歩み、どんな想いで結びつけてきたのかを伺いました。
studio iota LLC.のご紹介
音楽療法という選択肢
studio iota合同会社は、音楽が持つ“自然な楽しさ”を、医療・福祉・ブライダルなど多様な現場に届けています。
なかでも、重度障がいのある方々との音楽療法では、即興性と確かな演奏力の両立が求められます。
私たちが届けたいのは、“癒し”にとどまらず、心と身体を本能的に揺さぶる音楽体験です。
その試みのひとつとして、アニメソングをピアノトリオで再構築したCD《Anime That Piano》をリリースしました。
整体と音楽、ふたつの道が重なる場所で
「整体と音楽、どちらも自分にとって大切な軸。」
そう話すのは、小沢栄介さん。プロミュージシャンとして活動したのち、
現在は整体師として18年のキャリアを持ち、スタジオイオタの音楽療法プロジェクトでも中心的な存在です。
一見まったく異なるように見えるこの2つの分野。でも小沢さんにとっては、ごく自然に繋がっているものなのだとか。
「自分にしかできないこと」を探して──
Q. 前田(代表):
以前、(小沢)栄介さんが「整体と音楽、両方を経験してきた自分だからこそ、果たせる役割がある」と話してくれたのが印象的でした。今日はそのあたりを、改めて詳しく聞かせてください。
A. 小沢:
「使命感」なんて言うとちょっと大げさかもしれませんが…整体師であり、同時にプロのミュージシャンだった人って、たぶん本当に珍しいと思うんです。だからこそ、そこに僕自身の“付加価値”があると考えています。
整体の世界にも、音楽の世界にも、すごいプロフェッショナルはたくさんいます。でも、「自分にしか提供できない価値って何だろう?」と突き詰めたとき、この2つを掛け合わせるという発想に行き着いたんです。
整体もできるし、音楽もできる。両方の視点を持っているからこそ、届けられるものがあると思うんです。
これが、僕が「自分にしかできないこと」だと感じている、活動の核になる部分ですね。
「好き」から始まった、音楽の道
Q. 前田(代表):
まずは、プロのミュージシャンを目指したきっかけから聞かせてもらえますか?
A. 小沢:
最初は、本当に音楽が好きで始めただけでした。でも、仲間とバンドを組んでオリジナル曲を作るようになったら、その「創造」する楽しさに完全にのめり込んでしまって。
高校を卒業する頃には、横須賀のミュージックバーでバンド演奏をしてお金をいただく経験もしました。時には「トラ」(臨時プレイヤー)として、年上のベテランの方たちのバンドに混ぜてもらうこともありましたね。
10代のうちに、遊びではなく「仕事」として音楽に携わることの重みや責任感を肌で感じられたのは、すごく大きな経験だったと思います。
Q. 前田:
そのあと、講師もしていたんですよね?
A. 小沢:
はい。バンドが解散したあと、ご縁があって渋谷のタレント養成スクールで講師をしていました。その頃は、演奏よりも教える仕事が中心でした。
「創る」から「奏でる」へ、音楽との向き合い方の変化
Q. 前田(代表):
オリジナル曲を追求していた頃の「表現者」としての活動と、箱バンや講師としての「お仕事としての演奏」では、音楽との向き合い方も変わってきたんじゃないですか?
A. 小沢:
そうですね。自分を冷静に見てみると、ゼロから音楽を創り出す「創作者」や「表現者」というよりも、既存の楽曲を自分なりに解釈して音にする「演奏者」タイプなんだと思います。
バンドでの表現活動も充実していましたが、箱バンでさまざまなジャンルを演奏していく中で、次第に「楽器を弾く」ことそのものの面白さに目覚めていきました。
クラシック音楽のように、すでにある楽曲を丁寧に演奏することにも通じる感覚で、どんなジャンルでも、純粋に演奏そのものに喜びを見出せるようになったんです。
Q. 前田:
面白いですね。私はどちらかというと「創作者」タイプなので、自分が表現したい音楽と、仕事として受ける演奏との間には、明確な線を引いてしまうんです。栄介さんとは、そこのスタンスが大きく違いますね。
ステージを降り、見つけたもうひとつの“答え”
Q. 前田(代表):
順調に音楽の道を歩んでいたのに、なぜ整体師へ?
A. 小沢:
当時は音楽業界での活動に、心身ともに少し疲れを感じていたんです。将来に対する漠然とした不安もあって、「このままでいいのか」と立ち止まったのが20代前半でした。
そのとき、ふと「整体をやってみよう」と思ったんですよね。理由というより、直感でした。
Q. 前田:
特に強い動機があったわけではなかったんですね。
A. 小沢:
ええ、本当に自然な流れというか。不思議と迷いもなく、すぐに学校に通い始めました。学べば学ぶほど、その奥深さに引き込まれていって……。
音楽とはまったく異なる世界ですが、「明確な答えがないからこそ追求しがいがある」という点では、どこか通じるものを感じました。
整体師として生きる僕に、音楽がくれた“再出発”
Q. 前田(代表):
整体師になってから、一度は音楽の世界から距離を置かれたとのことですが、再び音楽、特に「音楽療法」へと向かうことになったきっかけは何だったのでしょうか?
A. 小沢:
整体師としての仕事がようやく軌道に乗りはじめた頃、有志で「大人のための文化祭」というイベントを企画したんです。それをきっかけに、また音楽仲間とのつながりが戻ってきて、自分の中でも音楽への情熱が再燃していきました。
ちょうどその時に、前田さん(代表)から「音楽療法に関わってみないか」と声をかけてもらったんです。
Q. 前田:
そのとき、私から声をかけられて…率直に、どう思いましたか?
A. 小沢:
まさに、ベストタイミングでした。だから話を聞いた瞬間、素直に「面白そうだな」と感じました。
実際に施設で演奏をしてみて、改めて音楽の力を信じることができたんです。
言葉でのコミュニケーションが難しい方々が、音に反応し、心を開いてくれる。
触れること、見ること、聴くこと──そのすべてが、相手との対話になる。
僕にとって、あの経験が「音楽療法の原点」になっています。
今では整体の現場でも、お客様の好きな音楽を流すなど、身体だけでなく“聴覚”にも働きかけるアプローチを大切にしています。
イオタムジカ 発足のきっかけは、NYのゴスペル教会での体験
前田(代表):
(※代表自身の体験談として)
以前、ニューヨークのゴスペル教会を訪れた際、牧師の力強い歌声と演奏に、集まった人々が涙を流し、踊り、心から解放されている光景を目の当たりにしました。
また、現地の病院で音楽療法の公演をした時も、患者さんたちが演奏に自然と加わってセッションが始まるような、アメリカの「演奏者と聴衆」という垣根のない空間に衝撃を受けたんです。
理屈を超えて人の心を揺さぶる体験を、私たちも日本で届けたい。
そう強く感じて帰国し、栄介さんたちに声をかけたのが、“イオタムジカ”の始まりでした。
音楽療法で目指すもの
難しいこと抜きで、心と身体にまっすぐ届く音楽体験
Q. 前田(代表):
当社の音楽療法プロジェクト“イオタムジカ”では、「みんなで一緒に手拍子をしましょう」といった、いわゆる揃える動きを促すプログラムとはちょっと違ったアプローチをしていますよね。
A. 小沢:
はい。僕たちが目指しているのは、もっと本能的な部分に働きかける音楽です。
たとえば、焚き火を囲んで自然と誰かが楽器を鳴らし始めたら、そこにいた人が理屈抜きで体を揺らし始めるような…そんな空気感が理想です。
人間って、本来とても主体的で、自由な動きができる存在だと思うんです。
でも、恥ずかしさとか“ちゃんとしなきゃ”みたいな感情が邪魔をして、その力を発揮できないことが多い。
僕たちの役割は、その“恥じらい”を取り払ってあげること。それが音楽療法の現場で、すごく大切だと思っています。
「音楽が単純にすごくかっこいいから、自然と身体が動いてしまう」。
そんな原始的で、それでいてとても純粋な反応を引き出すためには、やはり圧倒的な演奏力やグルーヴ感が必要なんです。だからこそ、僕自身も音楽に対する探求は、今でもずっと怠っていません。
創作者と巻き込み屋──タイプの違いが生む、チームとしての強さ
Q. 前田(代表):
私自身は、どちらかというと自分が表現したいものを突き詰めたい「創作者」タイプです。
一方で、栄介さんはどんな音楽でも楽しみながら周りを巻き込んでいく「演奏家」タイプ。
この違いこそが、グループにユニークな色を与えてくれていると感じています。
A. 小沢:
本当にそう思います。僕と前田さんは全くタイプが違いますからね。
でも、違うからこそ、お互いに足りない部分を補い合える強みになっていると思うし、何よりリスペクトし合える関係なのが大きい。
このメンバーだからこそできる音楽がある、そんな手応えを感じています。
ぶつかって、認め合って、強くなる。『Anime That Piano』誕生の原点
小沢:実は僕、音楽に対してはものすごくうるさいんです。たぶん、細かいし、こだわりも強い。
リズムもグルーヴも、納得いくまでとことん追求したいから、正直、ギクシャクしちゃう人も多いんですよね。
でも、そんな自分の“細かさ”を受け止めてくれて、対等に意見を言い合える人って、意外と少ない。
そういう意味では、前田さんや、Iota Musica Riitaのもうひとりのメンバーである迫さんくらいしか思い浮かばない。
大体はちょっと言うと、嫌な顔されちゃうからさ(笑)。
そんな風な関係があったからこそ、今回のCD《Anime That Piano》が誕生した。
前田さんや迫さんとは、ちゃんとぶつかれるし、それで一緒にやってもらえてるのがすごく嬉しいんだよね。本当に、ありがたいなって思ってる。
Q. 前田:
ありがとうございます。
A. 小沢:
いや、こちらこそ。本当に、いつも受け止めてくれてありがとうございます。
…うるさくて、すいません(笑)
左から : 迫香緒里(ピアノ)、前田紗希(ドラム)、小沢栄介(ベース)
音楽と整体の先にある「人のよろこび」
音楽って本当はもっと自由で、身近で、敷居の低いもの。
Q. 前田(代表):
最後に、栄介さんが考える「使命感」について、改めて聞かせてください。
A. 小沢:
僕が本当にやりたいのは、整体や音楽という「手段」そのものではなくて、それらを通して、人が「人間らしく、楽しく人生を送る」ためのお手伝いをすることなんです。そして、その結果として、人を笑顔にすること。
極端な話、僕にとって音楽はツールの一つなんです。
人生の本質は、みんなで楽しくやること。うまいとか下手とかどうでもよくて、いろんな人を巻き込んで、その場にいる全員で楽しみたい。
人とコミュニケーションをとって、喜んでもらうことが、僕自身の喜びです。整体も音楽も、そのための大切な手段なんですよ。
前田さんは芸術肌かもしれないけど、僕はどちらかというとエンタメ肌。みんなに楽しんでもらう、ということが僕の根底にはあります。
Q. 前田:
その想いが、私たちの音楽療法の核にもなっていますね。
A. 小沢:
ええ。だからこそ、「自然と体が動く」「動きたいから動く」という本能的な喜びを、どうすればもっと引き出せるか、ということを追求していきたい。
僕には、整体という身体を癒す技術と、音楽という心を揺さぶる技術があります。この二つを掛け合わせて、人を笑顔にする。これが、僕にしかできない「使命」だと思っています。
今こうして二つの道が交わったことに、心から感謝しています。
Q. 前田:
ありがとうございました。栄介さんの熱い想いが、すごく伝わってきました。私ひとりでは決して見ることができなかった景色を、今、栄介さんたちと一緒に見つけられている気がします。
これからも、一緒に最高の音楽を届けていきましょう!
取材後記
今回のインタビューは、逗子海岸エリアにある なぎさ橋珈琲 にて行いました。
晴れた日は富士山と美しいサンセットが望める海沿いロケーションのカフェです◎
(Photo 前田紗希)
最後に、プロミュージシャン×整体師として活動していくうえで、影響を受けた作品や、おすすめの音楽などをお伺いしました。
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整体院のBGMとしてよく流しています。名盤中の名盤ですが、どの曲も本当に素晴らしくて、アルバム全体がいい意味で同じテンション感。落ち着いて聴ける、大好きな作品です。
イオタのリリース作品『Anime That Piano』
そんな小沢さんもコアメンバーとなる音楽療法チーム、Iota Musica Riitaから『Anime That Piano』がリリースされました!
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ポストロック、ジャズ、クラシックの要素を取り入れ、人気アニメソングをまったく新しいアレンジで再構築。原曲とは異なる魅力を楽しめるだけでなく、トリオならではの華麗な演奏にも注目です。
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